ウェッジウッド「女王陛下の陶工と呼ばれた男」 Vol.6

 

『女王陛下の陶工』と呼ばれた男
― 天ハ自ラ助クル者ヲ助ク ―

ジョサイア45歳、 古代文明への憧れを形に! 

 前号は、世界三大ディナーセットの一つ、「フロッグ・サービス」についてでした。今号も世界に誇る陶磁器誕生のお話です。

「17世紀後半、イギリスでは、貴族の息子が家庭教師を同伴し、ヨーロッパ大陸、特にフランスとイタリアで文化・芸術・マナーを学ぶ『グランドツアー』が慣習となっていたんや。中でも古代ローマやルネサンス時代の遺跡が豊富なイタリアでの遺跡めぐりは定番やった。

18世紀前半にポンペイなどの遺跡の発見・発掘がつづいた。1760年代にその遺跡の本が出版されると、古代ギリシャ・ローマ時代の芸術が脚光を浴び、芸術や建築・インテリアに取りいれる新古典主義が流行したんや。ジョサイアと、古典の知識が豊富な共同経営者のベントレーは、その流れを早々に察知し、新古典主義様式の製品の開発を始めた。

ジョサイアは、すでにつくっていた、玄武岩(げんぶがん)(バサルト)に似た素材『ブラック・バサルト』―きめが細かくなめらかで耐水性のある素地―の特徴をいかしつつ、数千回にも及ぶ実験を重ね、『ジャスパー(碧玉(へぎょく))・ウェア』を完成させたんや。それは古代彫刻などに使われた大理石にも似た素地で、土台としても装飾用のパーツとしても利用できる優れもの。古代遺物の模様の型に白のジャスパーをいれてレリーフをつくり、濃色のジャスパーで成形した壺や陶板などに貼り付けた。

この新素材に古代のデザインを取り入れた商品は、多種多彩に展開され、人々を魅了していくんや」    つづく

【編集・デザイン:大山崎リトルプレイス
【大山崎リトルプレイスについて】私たちノーブルトレーダース(株)の本社は京都にあり、大山崎町は会社設立の原点の場所でもあります。その町で活 動をされている大山崎リトルプレイスさん。町や生活に関する情報をはじめ、近隣地域で活動をしている会社や人々を取材され「大山崎ツム・グ・ハグ」という フリーペーパーを毎月発行されています。その中で多くの人々に陶磁器の魅力を知っていただきたいと始まったのが窯にまつわるコラム「ル・ノーブル亭主の徒 然なるままに」です。