マイセン工房「カオリンと錬金術師とシノワズリ」Vol.3

青白く表情のない男、これこそがマイセンで初めて磁器焼成に成功したベドガーです。秘密漏えいを防ぐために、強王アウグストに幽閉された彼はうつ状態となり酒浸りの生活を送ることになる、そんな状態を表した一枚です。

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【テキスト版】ル・ノーブル亭主のつれづれなるままに
ーカオリンと錬金術師とシノワズリ VOL.3―

亭主様、ザクセン選帝侯*で強健王といわれたアウグストはなぜ、ベドガーを処刑せず磁器作りをさせたのでしょう。
「1702年に薬剤師で錬金術師でもあったベドガーを監禁し、『金』をつくる実験をさせるようになってから3年。その間、スウェーデンとの戦争で財政は逼迫。『金』が必要だというのに、ベドガーは全く結果を出せず。かと言って処刑すれば、今までベドガーに注ぎ込んだお金は無駄だったと周知するようなもの。一方、王の東洋磁器収集につぎ込まれた金額も相当な額になっていた。だから、『磁器を国内で造れば、他国から買う必要もなく、それを売ることで国の財源になると考え、ベドガーに磁器の開発をさせた方が得策では?』という伯爵の提案を受け入れたんや。
さて、1705年、磁器作りが新たな使命となったベドガーは、険しい丘に建つ広い実験室を用意され、実験の日々。それまでの軟禁生活では、豪華な食事や酒、一流の知識人との交流、散歩や動物園で動物と戯れることもできた。しかし、今回は、ベドガーに磁器造りへ集中させ、製法の情報流出防止のために関係者以外の出入りは禁止、全ての窓をレンガでふさぎ、実験室に監禁や。しかし、王は相変わらず『金』の完成も求め、ベドガーは磁器を作ることで『金』造りの時間を稼ごうと考え、励んだんや。一方、チルンハウス伯爵は、自国の産業として磁器の生産を考え、海外へ研修旅行に行ったり、研究・実験をしたんや」
*選帝侯…神聖ローマ帝国において、ドイツ王ないし神聖ローマ皇帝に対する選挙権を有した諸侯のこと

【編集・デザイン:大山崎リトルプレイス 大山崎ツム・グ・ハグ2013年Vol.3
【大 山崎リトルプレイスについて】私たちノーブルトレーダース(株)の本社は京都にあり、大山崎町は会社設立の原点の場所でもあります。その町で活 動をされている大山崎リトルプレイスさん。町や生活に関する情報をはじめ、近隣地域で活動をしている会社や人々を取材され「大山崎ツム・グ・ハグ」という フリーペーパーを毎月発行されています。その中で多くの人々に陶磁器の魅力を知っていただきたいと始まったのが窯にまつわるコラム「ル・ノーブル亭主の徒 然なるままに」です。