マイセン工房「カオリンと錬金術師とシノワズリ」Vol.4

有名な話ではありますが、18世紀初頭の本物の磁器と言われていたのは、中国と日本で作られたものだけでした。ですので、磁器はヨーロッパ世界では東洋の珍品として非常に高い価値のあるものでした。アウグスト王が求めていたのは、中国北部の河北省で6世紀頃に作られていた磁器だと考えられています。彼は磁器をオレンジにたとえて、1つ買えばもう1つ欲しくなる、と磁器への思いを書簡でつづっています。

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【テキスト版】ル・ノーブル亭主のつれづれなるままに

-カオリンと錬金術師とシノワズリ Vol.4-

亭主様、いよいよ磁器開発ですね?

「うむ、アウグスト王が、チルンハウス伯爵とベドガーに共同開発を命じ、金から磁器作りに方向転換したのが1704年。伯爵はそれまで30年近く、諸外国での研修や実験をし、磁器開発に情熱をかけていた。その間には太陽光線を集め、高い熱を発生させる巨大集光レンズや硬質磁器も開発したんや。硬質磁器はメディチ家を始め他でも造られていたが、中国の磁器ほど透明度、硬さ、白さに適うものではなかった。ベドガーと伯爵が目指したのは中国製を超える磁器だったので、今まで以上に高温で焼き、粘土をガラス質に変える必要があることで、二人の意見は一致していた。

伯爵は、自分の得た知識は惜しみなく、ベドガーに与え、ベドガーはさまざまな粘土や岩石を組み合わせ混ぜては、更なる高温で焼くことを繰り返した。結果、ガラス質で硬く、きめが細かい、レンガ色の小さな板状炻器を焼くことに成功。残る課題は、白く半透明にすることだけ!しかし、ここまで来た時に不運にも、北方戦争の敵スウェーデン軍がザクセンまで迫ってきた。王は、ベドガーをマイセンの難攻不落の城ー実験と設備なく、本も与えられず、寝食のみーへ再び移動させ、ベドガーは葡萄酒で気を紛らわす日々を一年近く送るんや。

【編集・デザイン:大山崎リトルプレイス 大山崎ツム・グ・ハグ2013年Vol.4
【大 山崎リトルプレイスについて】私たちノーブルトレーダース(株)の本社は京都にあり、大山崎町は会社設立の原点の場所でもあります。その町で活 動をされている大山崎リトルプレイスさん。町や生活に関する情報をはじめ、近隣地域で活動をしている会社や人々を取材され「大山崎ツム・グ・ハグ」という フリーペーパーを毎月発行されています。その中で多くの人々に陶磁器の魅力を知っていただきたいと始まったのが窯にまつわるコラム「ル・ノーブル亭主の徒 然なるままに」です。