伝統が紡ぐ癒しの音色・オルゴール

オルゴールの起源

時計が無かった中世ヨーロッパのころ、人々は教会の鐘の音で時間を知ることができました。「ノートルダムの鐘」で知られるように、高い塔の上に鐘を取り付け、鐘突男が主に朝と夕方と夜の3回、塔の上に登ってゆき、鐘を鳴らして時間を知らせていました。

当初、鐘は四つから成り立っていたため、「四個の組み鐘」を意味するラテン語を元に「カリヨン」と呼ばれており、この時計塔の鐘を自動的に鳴らす仕組みが考案されるようになります。

その仕組みとは、木の大きな筒(バレル)に打ち込まれたピンが木の棒(キー)を押し上げ、木の棒に結ばれたロープが塔の上の鐘をたたくハンマーと繋がり、自動的に鐘を鳴らすというものでした。そして、このカリヨンこそがオルゴール(自動演奏装置)の起源となったのです。

 

その後、16世紀初頭のゼンマイの発明により、時計技術は急速に進歩し、置時計や懐中時計などの小さな時計の製作が可能になります。時計が小さくなるに伴い、そこに組み込まれた音源となる鐘はベルになり、やがて薄い金属の板を並べた櫛歯へと変化していきます。時計技術の発展とともにオルゴールもより精巧になり、その後、時計技術から枝分かれして、音楽再生装置として発展していくことになりました。

19世紀後半、ディスクを換えることで何曲でも聞くことができるディスク・オルゴールが製品化され、パブやレストランなど人の集まる場所でのバックグラウンドミュージックとして親しまれました。しかし蓄音機やレコードの発明、ラジオ放送の開始など録音再生技術の改良発展にともない、自動演奏装置としてのオルゴールの需要は減少していったのでした。

現在では、工芸品やおみやげ物として目にすることが多いオルゴールですが、小さな箱や陶器製の置物からけなげに聞こえてくる可憐な音色を聞くと、なんだか気分がゆったりしてきます。ヨーロッパの伝統に培われた高い技術を誇る製品と癒しの音楽をぜひお楽しみください。

癒しの音色を奏でるオルゴールをご紹介します

エッグボックス

エッグボックス

リモージュボックスとはフランス・リモージュ市とその近郊で制作された蝶番付きの小さな陶磁器製の小物入れです。昔はリモージュボックスを制作している工房は20件ほどありましたが、時代の流れと共に次々と閉鎖になり、現在は3,4件ほどを残すのみとなっています。

こちらのエッグボックスはパリの小さな工房で作られる、世界で唯一リモージュ陶磁器を使ったミュージックボックス(オルゴール)です。

エルコラーノ

エルコラーノ

象嵌とは、金属、陶磁器、木材などの素材を使って作った模様を、また木材などの素材に嵌め込んだ工芸品です。イタリアの象嵌細工の歴史は、古く6~7世紀に遡ります。当時からくるみ、オリーヴ、レモン、オレンジ、チェリー、西洋梨、桑の木など様々な色の木片を用い、最大でも4ミリの厚みの彫刻されたピースを連ねて絵画が作られていました。

その後、職人たちが、宝石箱、絵画、テーブル、トレイ、ワゴンなどに細工を施すようになりイタリアを代表する伝統工芸として今に至っています。