ヘレンド あつらえの器 ~ヘレンドと万国博覧会~ 第五話

あつらえの器 ~ヘレンドと万国博覧会~

1848年、ヨーロッパで吹き荒れた革命はハンガリー王国にも波及。前号は「モールの息子たちは革命に参加したが、モールは…」まででした。その続きです。

「大半のユダヤ人はオーストリア政府に反対してハンガリー側につき、息子たちも革命に参加した。しかしモールはオーストリア宮廷に多くの顧客を持つことから、革命とは距離を置き営業を続けた。

やがて政府により鎮圧されたハンガリーは、自治権を剥奪されて領国へと逆戻り。しかし1851年以降、ギルドの廃止や関税の改革、農奴解放が行われ、1850年に開通したハンガリー初の鉄道や蒸気船の拡充により、農業や鉄鋼業などの輸出が伸びていったんや。そしてヨーロッパは、万国博覧会の時代を迎える。

1851年、ヴィクトリア女王の夫・アルバート公指揮のもと、ガラスと鉄筋を用いたドーム型『水晶宮』をメイン会場に第1回ロンドン万国博覧会が開催。出展社数はおよそ1万5千社にのぼり、その中の1社としてヘレンドは、オーストリア枠で中国風文様のセルヴィスを披露して金賞を受賞。会場を訪れた女王の目にとまり、ディナーセットの注文を承ったんや。ヘレンドの名はヨーロッパ中の上流階級に知れ渡ることとなり、注文が殺到。宣伝効果抜群や。そしてモールは、万博の常連になっていくんや」。つづく

【構成・執筆・編集・デザイン:大山崎リトルプレイス 
【大 山崎リトルプレイスについて】私たちノーブルトレーダース(株)の本社は京都にあり、大山崎町は会社設立の原点の場所でもあります。その町で活 動をされている大山崎リトルプレイスさん。町や生活に関する情報をはじめ、近隣地域で活動をしている会社や人々を取材され「大山崎ツム・グ・ハグ」という フリーペーパーを毎月発行されています。その中で多くの人々に陶磁器の魅力を知っていただきたいと始まったのが窯にまつわるコラム「ル・ノーブル亭主の徒 然なるままに」です。