マイセン工房「カオリンと錬金術師とシノワズリ」Vol.14

いよいよ本日は最終回です。ヘロルトとケンドラーの対立は続きます。また、ヨーロッパ国内においては争いが起こり、マイセンにも他国からの侵攻が。

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ル・ノーブル亭主のつれづれなるままに

ーカオリンと錬金術師とシノワズリ VOL.14―

二人の対立は、まだ続きそうですね。

「いくらヘロルトが邪魔をしても、時代はケンドラーの躍動感や遊び心が溢れるデザインを求めシノワズリー模様は時代遅れとなり、ヘロルトは脇役へと押しやられていった。2人の争いが続く中、欧米諸国では1740年、マリア・テレジア妃の即位をきっかけにオーストリア継承戦争が、1756年には七年戦争と2つの大戦が起こり、ザクセンにも参戦。他国からのマイセン侵攻も招き、共にマイセン工場も40年近く破滅と復興を繰り返すはめになった。

ヘロルトとケンドラーの争いは、戦禍の後も続いたが、絵付け部門に新しい監督が就くと、ヘロルトはその下で働くことを嫌い、隠居を決め、工場を去ったんや。一方のケンドラーも作品の人気に陰りが見え始め、幹部たちがパリの造形師を工場に迎えると、かつてのヘロルトがそうだったようにケンドラーも脇役へと転じた。そうして1775年1月にヘロルトが、その5月にケンドラーが亡くなり、二人の争う姿をもう見ることはなかった。

ベドガー、ヘロルト、ケンドラー3人が繰り広げたドラマは、東洋陶磁器の謎を解き、陶磁器を金に代わる宝にし、国と陶磁器の発展に尽くした壮大なドラマとなった。また、フンガー(Vol.8に登場)などマイセンからの逃亡者も、その秘法を持って欧米各地の陶磁器窯の誕生・発展に貢献したんや。この話もまたの機会にお話ししよう」。

【編集・デザイン:大山崎リトルプレイス  大山崎ツム・グ・ハグ2014年VOL.14
【大 山崎リトルプレイスについて】私たちノーブルトレーダース(株)の本社は京都にあり、大山崎町は会社設立の原点の場所でもあります。その町で活 動をされている大山崎リトルプレイスさん。町や生活に関する情報をはじめ、近隣地域で活動をしている会社や人々を取材され「大山崎ツム・グ・ハグ」という フリーペーパーを毎月発行されています。その中で多くの人々に陶磁器の魅力を知っていただきたいと始まったのが窯にまつわるコラム「ル・ノーブル亭主の徒 然なるままに」です。