鮮やかな配色と大胆なパターン使いが印象的なデザインブランド「マリメッコ(marimekko)」。最も有名な北欧ブランドの一つであり、日本でもファンが多く、北欧好きでなくともマリメッコ好きという方々もいらっしゃるのではないでしょうか?
マリメッコの始まり
マリメッコの始まりは、第2次世界大戦が終わった直後の1951年、マリメッコの前身となるプリントファブリックの会社のプリンテックス社を買収したヴィリヨ・ラティアが妻のアルミ・ラティアとともにテキスタイル会社を興したことに始まります。
当時は戦後の復興期で、テキスタイルデザインと言えば、重厚で重苦しい色合いのものが大半だったのですが、アルミは鮮やかで明るいデザインが必要だと考えていました。当時のマリメッコにいたデザイナーにはウニッコ柄でその名を馳せることになるマイヤ・イソラを基幹に数名がおり、マイヤのデザインをはじめ、大きな柄と明るい色彩で一躍脚光を浴びることになりました。
ファーストレディーに愛されるデザイン
マリメッコは発足当初から大胆な戦略でブランドの認知を進めました。明るくはっきりとした柄のテキスタイルはもちろん、高級ホテルでのファッションショーなど当時は奇抜と思われたアイディアを次々に実現させました。
1960年ごろからは海外輸出にも力を入れ始め、高い評価を受けています。この当時、アメリカ大統領ケネディの妻 ジャクリーン・オナシスがマリメッコのドレス9着を購入という話題性もあり、アメリカのファーストレディを広告塔に海外での需要も高まっていきました。
マリメッコの存在意義
現在、マリメッコは40以上の国々で発売されており、一大企業となった今でも創業者アルミ・ラティアの経営哲学は引き継がれています。
「マリメッコはデザインハウスであって、デザインのためにすべてを最優先にすべき」。つまり「デザインされた実用品」を作ることがマリメッコの存在意義なのです。この哲学の元、マリメッコはフィンランドを代表する大企業に成長しました。フィンランドの世界的テキスタイルブランド、マリメッコの快進撃はこれからも続いていくことは間違いありません。
マリメッコを代表するデザイナーをご紹介します。
マイヤ・イソラ
マリメッコの創業から30年以上も基幹デザイナーとして活躍し続けたマイヤ・イソラ。
1964年に発表されたマリメッコを代表するパターン「ウニッコ(Unikko)」柄は、マイヤ・イソラのデザインです。50年以上経った今でも愛され続ける永遠の定番柄です。ウニッコとは「ポピー(ケシ)の花」という意味です。
Lokki ロッキ/カモメ
マイヤ&クリスティーナ・イソラ が1961年にデザインした「Lokki ロッキ/カモメ」シリーズ。
カモメが雄大に飛ぶ姿のように、大きく波打ったデザインは迫力満点でです。
とてもシンプルなデザインですが、マリメッコらしさが詰まっていて、とても愛らしく暖かな空気にあふれています。
マイヤ・ロウエカリ
現在のマリメッコのスターデザイナーのマイヤ・ロウエカリ。
2003年、まだ学生だったマイヤはマリメッコが主催するデザインコンペでグランプリを受賞し、そのキャリアをスタートさせました。
マイヤのデザインは細い線で風景や花を書き込んでいくものが多く、イラストレーターに近いのかもしれません。ポップなデザインが、使う人を元気で楽しい気分にさせてくれます。
Veljekset ヴェルイェクセトゥ
フィンランド独立100周年記念デザイン。彼女がモチーフに選んだのは、フィンランドの森に暮らす動物たち。独特なタッチで一度見たら忘れられないインパクトがあり、100周年にふさわしい生命力と力強さを感じます。
Rasymatto ラシィマット/使い込まれたラグ
「使い込まれたラグ」という意味のRasymatto。マイヤの独創的なセンスが光るデザインで、チャーミングでどこか温かみのある手書き風のドット柄です。
Siirtolapuutarha シイルトラプータルハ/市民菜園
“Siirtolapuutarha シイルトラプータルハ/市民菜園”シリーズは、草花や風景が描かれていたり、女の子が隠れていて1つの物語のようになっていたり、抽象的な柄が施されていたり、田舎や都会の情景や町並みをストーリー仕立てで描かれたりと、アイテムごとにそれぞれ異なるものが描かれています。
しかし、どれも落ち着きの中に可愛らしさが感じられ、どこか統一感があります。
Kaalimetsa カーリメッツァ/キャベツの森
カーリメッツァはキャベツの森を意味します。彼女が自身の庭で育てているレタスやキャベツなどの様々な野菜からインスピレーションを受けて描いたデザイン。野菜たちからの生命力あふれる力強いタッチが印象的です。
アンニカ・リマラ
アンニカ・リマラは、マリメッコの子供服を扱う店舗で働いていましたが、創業メンバーのデザイナーが抜けたあと、その後任として、デザイナーに起用されました。
Tasaraita タサライタ/横縞
1968年にジーンズに似合うシャツとしてアンニカがデザインしたのがタサライタです。このポップなデザインのボーダー柄は一大ブームを巻き起こし、靴下、下着、パジャマなど次々にタサライタシリーズが生み出されました。
マリメッコで活躍した日本人デザイナー
石本藤雄
1974年から2006年までマリメッコで活躍した日本人デザイナーがいました。
石本さんが最初にマリメッコを意識したのは、実物ではなく雑誌から。ページの片隅に掲載されたマリメッコの大胆な色彩が石本さんの脳裏に焼き付いて離れられなくなりました。1970年まで東京で広告デザイナーを務めていた石本さんは、同年世界一周の旅に出て、旅の途中でマリメッコのことを思い出し、フィンランドで途中下車。そのままフィンランドに住み続け、1974年に焦がれ続けたマリメッコにようやくデザイナーとして迎えられました。抽象的で淡い色使いの作風が特徴です。
2011年にはフィンランドの芸術家に贈られてきた最高位の勲章『フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダル』を受賞。現在は同じくフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア(ARABIA)」のアート部門に所属しながら、77歳を迎えた現在も陶芸家として数多くの作品を生み出されています。