マイセン工房「カオリンと錬金術師とシノワズリ」Vol.10

今回は少しだけ寄り道して、アウグスト強王についてのお話しです。二回前のコラムのトップに掲載されていた肖像画を思い出してください。髪の毛の長い、赤いビロードのマントを雄々しくまとっていた彼がそうです。

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【テキスト版】ル・ノーブル亭主のつれづれなるままに

ーカオリンと錬金術師とシノワズリ VOL.10―

今月号からはヘロルトの出世劇の始まりですね。

「その前に余談やけど。ヘロルトがマイセンに入る前から、ヨーロッパでは中国趣味や柿右衛門など東洋陶磁器収集熱がますます高まり、アウグスト王は、プロイセン王が持つ見事な中国趣味文様の大きな壺など100点以上と、自分の竜騎兵600人とを交換取引する始末。王は、その『竜騎兵の壺』にヒントを得、磁器で出来た宮殿の建設を思いつくんや。そこへ登場したのがヘロルト。

ヘロルトは、すでに中国趣味文様を描く技術を持っており、1720年、マイセンの入社試験ではその腕前と作品を披露。審査員や王は大層感心し、ヘロルトの言うがまま、自由契約絵付師として住まいも工場の外、報酬も自分で査定できるという破格の扱いを認めたんや」。ベドガーの扱いとは雲泥の差。

「一方、経営難に陥っていたマイセン工場は、新顧問委員会が、不正を繰り返していたベドガーの宿敵ネーミッツを左遷、献身的にベドガーを介護した義弟シュタインブリュックを新工場総監督に任命。効率化と合理化を図った結果、生産量は増し、またヘロルトの描く中国趣味の絵柄が人気を博し、工場は劇的に立ち直っていった。生産増加に伴い、ヘロルトは弟子を雇うんやが、そこからまた彼の別の顔が現れるんや」。

【編集・デザイン:大山崎リトルプレイス 大山崎ツム・グ・ハグ2014年VOL.10
【大 山崎リトルプレイスについて】私たちノーブルトレーダース(株)の本社は京都にあり、大山崎町は会社設立の原点の場所でもあります。その町で活 動をされている大山崎リトルプレイスさん。町や生活に関する情報をはじめ、近隣地域で活動をしている会社や人々を取材され「大山崎ツム・グ・ハグ」という フリーペーパーを毎月発行されています。その中で多くの人々に陶磁器の魅力を知っていただきたいと始まったのが窯にまつわるコラム「ル・ノーブル亭主の徒 然なるままに」です。