微笑みの国、タイの器「ベンジャロン焼き」

タイの三大やきもの(陶磁器)は、ベンジャロン焼き、セラドン焼き、青花(染付とも言います)です。

中でもベンジャロン焼きは、元来が王室専用に製造されていたという歴史に加え、金彩を施した繊細で緻密な絵付けで、圧倒的に豪華且つ高価なものとなっています。

ベンジャロン焼きの歴史

ベンジャロン焼きはアユタヤ王朝時代(1351年 – 1767年)の17世紀前後から始まったとされています。当時のアユタヤは諸外国との交易で発展し、東南アジアでも有数の商業都市でした。この時期、日本では有田焼や古伊万里焼など色絵磁器が盛んに作られており、外交が盛んであったアユタヤにも輸入されて人気を博していたそうです。

そのころ既に中国(当時の明朝)からは、白い磁器の上に多色の彩色が施された色絵食器が伝わってきましたが、タイ国内にはまだ製作環境がなく、国王は職人を中国へと派遣し、そこで製造したものをタイ王室御用達として輸入していました。

ベンジャロン焼きの製法は、日本でも有田焼(伊万里)・九谷焼で有名な「五彩」と同じ素焼きの後、釉薬をかけて1200度以上の高温で本焼きします。上絵具で文様を色付けし、今度は700度程の温度で絵を焼き付けるといったものです。

初期のベンジャロン焼きは現在のものと異なり、金彩のない色絵磁器(赤絵磁器)でしたが、今から200年ほど前のラーマ2世(1767-1824)の時代に、「ラーイ・ナム・トーン(ラーイは文様、ナムは水、トーンは金を意味するタイ語)」と呼ばれる金の縁取りを施した豪華絢爛なスタイルを確立し、王室専用の磁器として作られるようになります。

その後、ベンジャロン焼きは王室御用達としてだけでなく、貴族・商人の生活にも浸透していき、タイを代表する高級磁器となっていきました。

ベンジャロン焼きの特長

ベンジャロン焼きの語源は古代サンスクリット語のベンジャとロングに由来しており、「五彩」という意味を持ちます。五彩、つまりは多くの彩色という意味をなしているという言葉の通り、3,5,8色、又はそれ以上の彩色が施されています。

シンメトリックな左右対称の文様に、ふんだんに使われた金彩、そしてタイ王族の象徴となっているガルーダ(ビシュヌ神の乗る半人の鳥)や花、草、炎などのタイの伝統的なモチーフが使用されているところなどが代表的な特長です。

金が使用され始めたのはラマ2世の時代からで、ポピュラーな文様は主にラマ2世や、ラーマ5世(1853-1910)の時期に作られたものだそうです。

ベンジャロン焼きの工房をご紹介します。

ベンジャロン焼工房 ピンスワン

バンコク近郊の水上マーケットで有名なアムパワーからほど近い場所にベンジャロン焼きの工房「ピンスワン・ベンジャロン」があります。王室御用達ということから政府の要人などの会食などに使用された食器や、国賓の贈答品などもピンスワンで作られています。

ブランベンジャロン工房

ブランバン・ベンジャロンは1995年3月22日、タイ中部のサムットサーコーン県に設立されました。普通のベンジャロンよりも複雑で緻密な模様が特徴です。

ボーンチャイナのもつあたたかな色、豪華で繊細な手描きの模様等、タイを代表する高級品であるベンジャロン焼きを是非ご覧ください。