バカラ(Baccarat)創設250周年

クリスタルの代名詞とも言われ、各国の王侯貴族たちに愛されてきたバカラ。ワインと美食の国、フランスにあってバカラのグラスは最高のおもてなしを意味します。

長い歴史の中で培われたデザインは、クラシックからモダンなものまで、様々なシリーズがありますが、共通して言えるのは、バランスの美しさ、シャープな力強さ。まさしく王者のクリスタルと言えるでしょう。

豊富な森林資源と豊かな水により生まれる

1764年- バカラ(Baccarat) 創設

バカラは今から250年前の1764年にルイ15世の認可を受け、パリから東へ400キロのドイツ国境に近いフランス東部ロレーヌ地方の山地のバカラ村に創設されました。当時のフランスは、イギリスとの7年戦争など、内外で戦火が絶えず、国土は疲弊しきっていました。ロレーヌ地方の司教であったモンモランシー・ラヴァルは、経済の立て直しを図るためガラスの先進地ボヘミアを手本に、この地方の豊富な森林資源と豊かな水を使ったガラス工場の創設に奔走しました。

1816年、バカラは本格的なクリスタルガラスの制作をはじめましたが、透明度の高いクリスタル・グラスの製造が始まったのは1823年からでした。ロレーヌ地方の人々の辛抱強く、黙々と努力を重ねる向上心と、1823年に就任した5代目の経営者ピエール・A・ゴダール・デマレの「最高のクリスタルを、ロレーヌ地方より生産する」という理想と信念により、バカラはすぐにクリスタルグラスの名門へと成長していきました。

フランスの文化の発展とともに美しさを増すバカラのグラス

1841年 – アルクール

1855年 – ローハン
フランスにある町の名前で、1855年のパリ万博で名誉大賞を受賞しました。

1878年 – カプリ
インドのバローダ王国の妃の為に作られ、1878年のパリ万博に出品。モナコ王女主催の晩餐会にも用いられました。

1939年 – パルメ
パリ郊外ランブイエにある大統領のハンティングロッジのために製作されました。

1533年フランス国王アンリ2世のもとにカトリーヌ・ド・メディチが嫁いだ時、フィレンツェの名家メディチ家からの輿入れ道具には、ヴェネツィアン・グラスや銀のカトラリー、陶器など、当時のフランスの宮廷ではめずらしいものばかりが含まれていました。

それらの品々を手本にして、フランスの食卓は発展していき、ブルボン王朝全盛期にはセーブル焼きや金銀器が登場。さらにナポレオン1世時代を経て、食器は銀期よりも陶磁器が好まれ、グラスはガラス製が食卓を飾るようになりました。大小様々な用途別のグラスが整然と並ぶようになったのは、19世紀ごろと言われています。

この流行をいち早く取り入れたのがアルクール公爵で、現在もバカラの代表的グラスとして知られる「アルクール」は1825年、公爵の注文によって作られました。どっしりとした台座、光を集める深いフラットカット、美しく力強いフォルムが特徴のこのグラスは、1867年のパリ万国博覧会で数々の受賞を果たし、当時の貴族の食卓で大変ブームになりました。

いつの時代も変わらない“王者たちのクリスタル”への誇り

1950年 – ナンシー

1964年 – ドンペリニヨン
ルーブル美術館で行われた、バカラ創立200周年展示会において発表されました。シャンパンの発明者ドン ペリニョン僧侶から名前が取られました。

1975年 – ハーモニー

1980年 – マッセナ
ナポレオンに「勝利の女神の申し子」と呼ばれた陸軍元帥マッセナから名付けられました。

1992年 – ギンコ
ギンコとは中国を原産とする「銀杏」という意味です。

1994年 – ベガ

2000年 – アルカード

2009年 – アビス
アビスとは「深淵・深海」という意味です。

2014年- 創設250周年

バカラの技術が飛躍的に進歩したのは、19世紀から20世紀にかけての数々の受賞と無縁ではありません。グラスや装飾品にとどまらず、大きなシャンデリアや家具、さらには噴水などそれまでクリスタルでは考えられなかったものを制作し、その芸術性や先進性、高い製作技術に対し1855年のパリ万博で金賞、続く1867年、1878年のパリ万博ではグランプリを受賞。バカラの名前は世界中に広がり、歴代フランス国王をはじめ、ナポレオン、ロシアのニコライ2世、インドのマハラジャなど、世界中の王侯貴族たちにも愛用され、“王者たちのクリスタル”と冠されるようになりました。

そして19世紀末から20世紀になると、ジャポニズムやアール・デコなどの芸術潮流が高まり、次々と新しいデザインが生まれてきましたがバカラはこれらも創作のアイデアとして取り入れていきます。この頃からバカラはフランス国内に限らず広く国外の優れたデザイナーを起用し始め、以来新しいデザインの可能性を広げるべく積極的に取り組んでいます。気鋭のデザイナーの個性と熟練した職人の技が出会い、クリスタルにシンプルな美しさを追求したバカラデザインが創造されていくのです。

クリスタルは、純白の砂(珪砂)、酸化鉛、カリウム、ソーダ灰と精製用の少量の参加金属によって作られます。クリスタルの特徴は、比重が重いことによる重厚感、光の屈折率が高いことによる煌めき、そして高い透明度を誇り、爪で弾いた時のピーンという共鳴度に優れていること。また、クリスタルはガラスよりも柔らかく、より複雑な成形やカットなどの装飾を施すことが可能です。バカラクリスタルの美の基本をなすのは、いつの時代においても何より「職人の手」なのです。バカラクリスタルは、今日でもそのひとつひとつが成形から検品まで多くの職人たちの手を経て生まれています。最高のクオリティでなければバカラと呼ばないという老舗の誇りがバカラの信頼となっています。