スポード/SPODE

銅板転写技術の開発とファイン・ボーンチャイナの完成、二つの偉業を果たしたスポード窯

スポードの歴史

スポード社はジョサイア・スポード1世によって1770年、ストークオントレントに創設されました。スポード1世は英国陶磁器のデコレーションに革命をもたらした、銅板転写による下絵付けの技術を開発しました。これによって、ブルー&ホワイトの陶磁器の絵付けの安定性と生産性が高まりました。そして中国の陶磁器を複製することが可能になったのです。というのも、18世紀頃、ヨーロッパの上流階級の人々は中国のハンドペイントの陶磁器を好みましたが、高価で手に入れることは簡単ではありませんでした。そこで英国の地元の窯が中国の陶磁器の複製を作るようになりました。

スポード1世は1797年に病死してしまいますが、スポード社は息子のスポード2世によって受け継がれます。

スポード社のもう一つの偉業は、スポード2世がファイン・ボーンチャイナを完成させたことです。中国の白磁がたくさん輸入されていた時代、ヨーロッパの人々は白磁に憧れ、各国の窯では陶磁器の白さを追求する研究がされていました。白磁の白さを作るカオリンが採れなかったイギリスでは、代わりに牛の骨灰を粘土に混ぜることで透光性のある、なめらかな乳白色の陶磁器を生み出しました。これがボーンチャイナです。優れた強度があることも特徴の一つです。ファイン・ボーンチャイナは骨灰の含有量が50%以上のものを指します。

陶磁器産業に大きな影響を与えたスポード社は1806年、ジョージ4世より英国王室御用達の勅許であるロイヤル・ウォラントを授けられました。

銅板転写

銅板転写とは、デザインが彫刻された銅板にインクを塗り、薄紙に印刷して、その薄紙を素焼きした陶磁器に張り付けてデザインを転写する手法です。風景がなどの細かい線やデザインなども安定して表現できるようになりました。

例えば、これはヨーロピアンポートというプレートとその縁取りのデザインの銅板です。

 

 

 

 

 

ブルー一色の濃淡で表現される美しいデザインは、熟練の銅板彫刻の職人さんの技の賜物です。

 

ブルーイタリアン

スポードといえば、東洋の憧れが感じられるブルーイタリアンでおなじみですね。

ブルーイタリアンは、1816年に発表されました。古代ローマの伝統的風景をモチーフとして、ローマ建築の建物と水道橋、牛の水浴びや草を刈る男女が描かれています。当時の皇帝ジョージ4世はシノワズリーにはまっており、日本の伊万里焼の金襴手をこよなく愛していました。多くの窯が皇太子好みのイマリパターンを制作しました。スポード社のブルーイタリアンはローマの風景にイマリ写しの装飾の縁取りを合わせた、ヨーロッパと東洋の文化が融合したデザインです。

銅板転写技術の集大成ともいわれるこのデザインは、約200年経た現在まで変わらず愛され続ける永遠のベストセラーとなっています。

 

2008年に工場が閉鎖してしまったのちも、英国ポートメリオン社(Portmeirion)の傘下でこれらのデザインが引き継がれています。2020年に創業250周年を迎えました。